真水総合研究所

地域振興、まちづくり、時事、読書録、旅行記等、いろいろ書いていきたいと思います。

まだ企業誘致やってるの?

 地方の自治体が取り組む産業政策の大きな柱として「産業振興」と「企業誘致」がある。

 

 どちらも地方に雇用を生み出すため、かねてから用いられてきた手段だ。

 表題に答えは出ているのだが、もし仮にこの2つに優劣をつける場合、産業振興こそ優先して取り組むべきテーマだと私は考えている。

 

 戦後、地方の企業誘致を大いに盛り上げたのは間違いなく田中角栄の「日本列島改造論」だ。太平洋ベルトに代表される重工業を、東京と地方を結びつけることで裏日本など地方各地に「ミニ東京」を作り出そうとした。

 

 日本列島改造論は地方に雇用を作るという意味では一定の成果を挙げたといえるが、同時に地方都市の中心市街地の空洞化を招いた。

 

 当時地方への企業誘致がそれなりにうまくいっていた要因については

 ①地方の安価な労働力と土地

 ②大量生産大量消費

 ③技術の内製化

 などが挙げられる。

 

 ところが現在はどうかといえば、

 ①については当時と異なりグローバル化が進み、地方よりもアジアのほうが安価な労働力・土地を提供してくれる。

 ②についても、これからは多様化、多極化の時代であり、求められるのはオーダーメイドだ。

 ③についても、これからの時代、すべての技術を一気通貫で自社でまかなうことは現実的ではない。むしろ専門性の高い分野についてはアウトソースする時代であり、関連する産業が隣接することにメリットがある。7大都市はともかくその他の地方ではビジネスパートナーも少ない。

 いずれの要因においても企業側にとって新たに地方に進出する動機は小さくなっているのだ。

 

 ジェインジェイコブスは「発展する地域・衰退する地域」において、地域経済を転換させる力として、地域内の都市の市場、仕事、技術、移植工場、資本を上げている。遠方の都市のこれらの力の一部分がもたらされると歪な状態を生み出すとも述べている。東京に本社機能をもつ企業の工場誘致はまさにこの状態であり、その地域にとっていびつな雇用を生み出し、撤退時には住民もろともなくなってしまう。

 

 これらの現況を鑑みるに、行政として限られたリソースをさくべき方策は産業振興である。その際、圏域内の都市を中心に輸入代替産業を育てていかなければならない。

 企業誘致に関しては、圏域の産業構造、集積から導き出した産業クラスター政策にのっとり、できる範囲で取り組むべきだ。