【書評】AI vs.教科書が読めない子どもたち
2018年、書店で見かけない日がないというくらいに売れていた本書だが、2019年になってようやく読めたので書評を書いてみる。
昨今のAIブームの中で騒がれるシンギュラリティの到来について、著者は自身の研究に基づき、少なくとも近い将来には起こらないと否定している。
「東ロボくん」の研究の中で、著者はAIの苦手分野として読解力をあげ、
「一を聞いて十を知る能力、応用力、柔軟性、フレームに囚われない発想力があればAI恐るるに足らず」とまで述べている。
しかし、現実は厳しい。
著者の調査によって分かったのは現在の中高生の読解力不足だった。
半数近くの中高生は
「教科書が読めない」のだ。
たとえAIが読解力を苦手としていても、読解力がない人間は早晩、AIに代替されその後の職にも就けなくなる。「AI恐慌」の到来だ。
この現状に警鐘を鳴らすべく世にでたのが本書であるが、残念ながら現在の日本の公教育はアクティブラーニングに力を入れるばかりで、読解力不足に気づいてすらいない節すらある。
また著者の調査でも、読解力との相関が見られる習慣等は見つからず、(読書好きなどは関係がない。唯一、貧困は読解力不足につながるとしている。)
読解力不足への明確な処方箋は現状ない。
著者は生き残る術として、人が困っていることで需要が供給を上回るものであれば仕事になると提言しているが、読解力不足への答えにはなっておらず、結局はAI恐慌の到来を防げないのではないかという不安は拭えなかった。
(労働市場を生き抜く生存戦略の一要素としてはいいと思うが…)
数学者である著者の特徴なのか、総じてロジカルな印象であり、多少回りくどい
言い回しがクセになるいい本であった。